楽曲には著作権があり、他人の作った楽曲の利用には制限があります。なぜそのような制限があるのでしょうか?それは、作曲者が十分な見返りを得られるようにするためです。もし一度発表された楽曲が誰でも自由に聴いたり流したりできてしまうと、作曲者はそれを販売したりすることができず、作曲にかけた労力に対する見返りが得られません。結果として、作曲して世の中に発表しようという人はとても少なくなってしまうでしょう。著作権という仕組みがあることで、人々の「作曲しよう」という意欲・動機を生み出しているのです。このような、人々の「〇〇しよう」「〇〇したい」という動機のことをインセンティブと呼びます。税制改革や感染症対策でも、あるいはフリマアプリの設計やジェンダー格差の解消でも、はたまた楽市楽座やマニュファクチュアでも、社会の仕組みを考えるときには、経済学は、人々のインセンティブを考慮して評価・デザインします。仕組みが人々の行動をどのように変え、社会にどのような結果をもたらすかを考えるということです。例えば、少子化を食い止めるためには、「どうしたら子育て世代が子どもを産みたがるか」というインセンティブについて考えることになります。ここで政府ができることは色々あります。例えば、A 出産したときに補助金を出すB 子育ての時間を確保できるよう育休制度を充実させるC 子どもにかかる学習の費用を免除するといったような対策です。どれも子どもを産むインセンティブを高めてくれそうです。しかし、財源は限られていますから、この中で、最もコストパフォーマンスの良い組み合わせを選ぶ必要があります。そのために、経済学は、それぞれの対策がどれだけ出産を増やすかの効果をデータから測定・評価します。このようなデータに基づいた合理的な根拠をエビデンスと呼びます。そのために、どのようなデータを収集すべきか、それをどのように分析すべきかを経済学は教えてくれます。確かなエビデンスに基づいて、より良い仕組みを作るためのツールを備えた学問なのです。10❶インセンティブ=意欲を重視❷エビデンス=根拠を重視経済学ってどんな学問? ─特徴を二つ紹介
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